ひろろーぐ

小さな山村で暮らしながら、地域社会、民俗、狩猟、採集について考察・再定義するブログ

『東北一万年のフィールドワーク13 大鳥』ブックレットと、芸工大の学生たち。

ども、田口(@tagu_h1114_18)です。

2016年から、東北芸術工科大学(以下、芸工大)の学生たちが中心となって2年にも渡り大鳥を調査し、ブックレットを作ってくれました。

このブックレットシリーズは大鳥が初めてではなく、芸工大の田口洋美先生の監修の元、秋田県の阿仁根子や長野県栄村の秋山郷、山形県小国町の小玉川などのマタギ集落と呼ばれるところも含め、東北の様々な地域に学生らとフィールドワークを重ね、民俗誌を作り上げてきた。

大鳥は13番目の調査地。

 

芸工大の調査チームは年5~6位のペースで足を運び、朝日屋や自然の家に泊まりながら調査を続けていた。

田口洋美先生と話が出来るのはとてつもなく楽しかったし、学生たちが大鳥に来る時に、いつも直前だったが、「明日大鳥にいきます」と連絡を貰うのが何気に嬉しかった。大鳥で、大鳥の外の人と、大鳥の民俗についてお酒を呑みながら語り合えることが楽しかった。

学生の調査メンバーには、カッパが大好きすぎる子や、古文書が読める子、鳥瞰図やスケッチが上手な子、盛り上げ隊長、地域の人から丁寧に話を聞いているのが目に浮かぶ子…。来る度にメンバーが数人変わるのが最初は不思議だったけど、一年過ぎるあたりから慣れたし、それはそれで面白かった。

カッパ大好きな子にもらった、カッパのぬいぐるみとカッパ捕獲許可証。

大鳥のタキタロウ祭りでもボランティアで手伝ってもらったり、夏の運動会に参加してもらったりと、足を運ぶ回数と地元の人との接点を重ね、地域の内側に少しずつ入っていったようにも思える。キッカケは冊子作りだったかもしれないけれど、機会があればまた、大鳥と接点を持ってほしいと思うし、僕自身も共働できることを手掛けられたらな…とも思う。

 

ブックレットには、山菜のこと、栃の実のこと、採集物リスト、狩猟のこと、屋号マップや水路地図、鉱山の話や古文書の読解などが記されている。

その中身について敢えて触れないが、僕が『大鳥の輪郭』で書き記すことができなかった項目が幾つもあった。

僕が地元の人から聞いたことが無い話が幾つもあった。

 

ある意味、悔しいというか、「そういう地元の人の話を聞けて羨ましいな…」「その現場に居たかったな」と思う反面、新たな発見があったことで、今後の聞き取り調査の引き出しが増えて、とても有難い。

この手の本を作る事がいささか大変なことは、一度だけ作ったことがあるので何となくわかる。文献を読むこと、地図を眺めること、現場に赴くこと、写真を撮ること、絵をかくこと、話を聞くこと、書き起こすこと、事実確認をすること。複数人で手をかけ、大学の先生の監修があったとはいえ、ここまでよくまとめてくれたなって思う。

 

「山から糧を得て、家を構え、村を拓き、集い住む」ということがこの本のテーマ。

良く街場のシンポジウムなどで学者さんや頭が切れる人が抽象概念や一般的な言葉で的を得た表現している。その言論には、この本のスタイルのように現場の事実を大量に拾い集め、幾度となく掲示してきた背景があるんじゃないかと思う。

そういう意味で自分自身、改めて今後も調査を続けていく意義を感じさせてくれたし、それは長い道のりであることも、だけどあまり時間がないことも…。

※余談だけどここ最近、何度も何度も「時間がないから聞いて書き残さなきゃ…」という文字をこのブログで打っている気がして、「そんな暇があったら聞き書きしろよ…」って思うので、今年こそは事実を書き残し、それを少しずつアウトプットすることに力を注いでいきたい。

自分自身が人々の記憶や経験を形として残すことに何の意味があるのか、未だにわからないでいるけれど、人が作って形になったモノを手に取って、嬉しい気持ちになっているのも事実。

 

芸工大の田口洋美先生、蛯原一平さん、浅野友里子さん、学生さんたち。本当にありがとうございました。

 

この本は残念ながら販売はしていないそうなのですが、山形県の図書館にもあるでしょうし、鶴岡市の図書館にも寄贈したとのことでしたので、気になる方はぜひ図書館で読んでみてください。

 

 

ちなみにですが僕が作った『大鳥の輪郭』はネットで販売していますので、興味ある方はポチッとどうぞ。

販売ページ:【送料込】大鳥民俗誌『大鳥の輪郭』 

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せば、またの。

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