熊狩りシーズン到来!春クマ猟に必要不可欠な7つ道具+αを紹介します!
2015/04/27
山の神様にそっぽを向かれないよう、お神酒上げではしっかりと二礼二拍一礼を心がけている、田口
4月にも入れば、山の雪も溶けてきて、ツキノワグマさんが冬眠から目覚めるころ。
そのタイミングに合わせるように、地元のマタギさんたちはいそいそと熊猟の準備を始めます。
昨年に初めて春熊猟に行った時は、命拾いをした貴重な経験をしましたが、自分の装備にもかなり不十分なところがありました。
参考:狩猟デビューで本当に死にかけた。~マタギの世界はめちゃくちゃ厳しい!命懸けの熊狩りに参加してきました!~|ひろろーぐ
熊狩りは、残雪の残る危険な山の中に入り、集団で狩りをするために、普通の狩猟とは違って、それなりの準備と覚悟を要する。
そこで今回は、熊狩りに必要とされる7つ道具+αをご紹介していきたいと思います。
熊狩りに必要不可欠なの7つ道具
・鉄砲、弾
僕の鉄砲はSKBというブロー式の散弾銃。3発まで弾丸が入る仕様になっています。重さは2kgぐらいあります。
弾丸はスラッグ弾。一発玉といわれるやつです。
散弾銃と言えば、弾丸の中に小さな弾がたくさん入っていて、それがショットガンのように飛び散るような弾がほとんどなのですが、熊狩りでは、大きい弾が一個のみ入っている弾を使います。一発弾の方が、散弾よりも命中率は下がりますが、威力が大きい。つまりは、普通の散弾では熊は倒せないです。
・双眼鏡
"KOWA ダハプリズム式 10倍50口径" という双眼鏡を買いました。
何百倍にもズームできるような双眼鏡もありますが、手ブレのことも考えると狩猟の場合は8倍~10倍がベター。周りの猟師もみな、8倍~10倍の双眼鏡を持っています。
単純に倍率だけで考えると数千円の安い双眼鏡もあるのですが、明るさが不十分だったり、防水じゃなかったりする。少しでも明るく見えて、モノが発見しやすいようにと、少々値が張りましたが、この双眼鏡を購入しました。
舞い方(司令塔のような人)の位置を確認したり、クマを探すのに使います。
・ロープ
新幹線ロープという工事用のロープの8mm×18m。
獲った熊を解体しやすい場所まで運ぶのですが、その際に熊にロープをつないで引っ張っていくのに主に使います。
山菜(ゼンマイ)採りの時にも使えるということで僕は18mも買ってしまいましたが、熊狩りだけで言えば10mもあれば十分とのこと。
普通のホームセンターとかで売っている普通のロープは耐久性が弱く、向いていない。少し専門的なお店じゃないとおいていないかもしれませんが、新幹線ロープがおすすめ。160円/mくらい。
山岳ショップで売っているザイルや、ヨットで使うシートも良いと思います。
・杖
樫の木で作った杖。
杖を使って、主に残雪がある山をトラバースする(斜面を横方向に横断すること)時につかいます。
こんな感じで杖を使ってトラバースします。
杖の先端はナタなどで加工して尖らせておきます。
持ち手の部分にはビニールテープを貼っておき、雪の中に埋もれても発見しやすいようにしておく。また、持ち手の先端には穴を明け、紐を通して輪っかを作っておきます。この輪っかに手首を通して杖をしっかりと持つ。スキーのストックの持ち手に紐がついていますよね。あんな役割をします。
・ナイフ・ナタ
手前の大きな刃物は、ナガサと言われ、ナタとナイフの役割を兼ね備えたマタギの狩猟刀。地域の人からの頂き物。木の枝などを切る時にも、クマを解体する時にも使います。
刃先が尖っていることから、昔はこういったナガサに棒をくくりつけ、槍として使って熊と戦ったそうです。
写真奥の小型ナイフはBUCKというアメリカのメーカーのバンガード192BRという1万円のナイフ。熊の毛皮と肉を剥ぐときなど、細かい箇所を切りたいときに使います。
このナイフ、見た目はめちゃカッコイイのですが、両刃なこともあって初心者には研ぐのが難しい。
次に買い換えるときは別のナイフを買うと思います。
・無線機 片耳イアホン・電池・電池パック
集団で山に散り、クマを囲うようにして狩りをする巻狩りスタイルで猟を行うために、基本的にお互いの位置が目では確認できない。なので、無線機を通じて連携をとります。
片耳イアホンがあるのは、無線機の声が漏れてしまうと、クマに気づかれると逃げられてしまうから。クマは目があまりよくないと言われますが、耳はスゴくよく良いらしく、人の足音や声に感づいて逃げてしまうんだとか。なので、片耳にイアホンをして無線からの情報をキャッチします。
無線機のバッテリーにはリチウムイオンの充電式のバッテリーと単3電池式の電池パックの2種類を持っていきます。充電式のバッテリーが切れても、電池パックに変えられるよう予備を持っていきます。
・タカツメ
3本の長い鉄の爪が付いたアイゼンのようなモノ。大鳥地域では通称タカツメとも言われます。
この鉄の爪の部分がガッチリと雪を掴んで、足が滑らないようにしてくれる。残雪の斜面が厳しいところを登ったり、トラバースする(斜面を横方向に横断すること)ときに使います。
タカツメは熊狩りやゼンマイ採り、それに山岳系の人にしか需要がないので、市販されていないらしいので、鍛冶屋に頼んで作ってもらうしかないんだとか。作ってもらうとなると、ワンセット3万円くらいだそうな。
+αで必要なアイテム
・腰皮(こしかわ)、もしくは尻皮(しりかわ)
雪国ならではのアイテム。
腰皮は、ウエストポーチのように腰にぶら下げておき、雪上で腰をついて座った時に毛皮の部分が当たるようにすると、あら不思議。お尻が全然濡れないのです。
なめされた毛皮は大抵そうなのですが、毛皮は水分を通さず、暖かいという特徴があります。体を暖めるのに最適なんですね。だからモノがない昔の日本ではウサギやテン、ムササビ、カモシカの毛皮などがとても重宝された。
良いカッパであれば、水気は通さないからお尻が濡れないかもしれない。けれど、お尻が冷えます。腰皮だとそれが無いんですよね。
荷物が多く、斜面の厳しい山を登るからこそ休憩は必ずとります。その時に、土が見える場所があればラッキーですが、ほとんどは雪の上で休むことになる。休むことも仕事のうちなので、しっかりと足や肩を雪上で休められるように、腰皮は必要です。
・非常食
カロリーメイトとチョコレートと飴玉。
昼食は、僕の場合はおにぎりを持っていくのですが、それとは別で非常食を持っていきます。
チョコレートは疲れをとるため、飴は集中力を上げるため、カロリーメイトは補食。
遭難の可能性もゼロではないので、山で一泊しても乗り切れるくらいの食料は必要だと思います。魚肉ソーセージなんかも小さくてお腹に溜まって良いと言われますね。僕も持っていくことがあります。
・スマホ
iPhone5を持っていきます。
電波が届かない山奥でスマホは無意味に思えるかもしれませんが、コンパスのアプリもあるし、GPS機能が付いているので、いざという時に自分の現在地を確認できます。
それとは別に、僕は主にField Access(有料)というスマホアプリを使うために持っていきます。
このアプリは自分が歩いた軌跡を地図上に記録してくれていて、活動時間や高低差もわかる。これらの機能は無料で取得できる山岳系のアプリなら大体は備わっている。
しかし、Field Accessには更に素晴らしい機能がついています。自分が地図上に記録したい言葉や場所を都度ブックマークできるんです。
採れた山菜やキノコの位置、獲物と出会った位置などをその場で、全てデジタルで記録できる。
うちの近くにはイタドリが生えているので、それをブックマークしてみました。勿論、私有地なので勝手に取ることができませんが。
熊狩りの時は、自分が歩いた軌跡を記録しておき、あとで一緒にいった人たちとデータを共有するために使っています。
・ゴミ袋とジップロック
ゴミ袋は、解体した熊の肉をいれるために使います。
熊の肉をリュックサックに背負わなければいけないので、まずはゴミ袋に入れて、それからリュックサックに詰めます。さすがに、熊の肉を生のままリュックには詰めたくない…。
ジップロックは何かと便利。雨が降ってきたら、スマホや無線機などのデジタル機器を守るためにジップロックの中に入れる。おにぎりや非常食も入れます。
・ヘッドライト
朝早くに熊狩りに出かけても、太陽が沈んでも返ってこれないことがあるのが熊狩り。
足元を照らすヘッドライトがなければ山の中を歩けません。
僕が購入したのはモンベルのコンパクトヘッドライト。
明るさが十分か…と言えばとそうでもありませんが、価格が2000円と比較的安価なこと、明かりにも3段階あり、ボタンを押せば都度変更できること、単3電池一個で使えることからこのヘッドライトにしました。
無線機の電池パックも単三電池だったのですが、電池のサイズは揃えていたほうが楽です。
・リュックサック
上記のものを諸々詰めるのに必要。
リュックには、水の入ったペットボトル・昼食(おにぎり)・非常食・小型ナイフ・双眼鏡・ゴミ袋・ジップロック・ヘッドライト・ロープ・鉄砲の弾を入れています。
熊が獲れたら、ここにクマの肉も入ります。
熊肉もいれると、20kg~30kgを背負うことになるので、丈夫で背負いやすいリュックであることに越したことありません。
終わりに…
いかがでしたか?
日帰りの荷物なのに結構な重装備でビックリしたかもしれませんね。
ちなみに、装備をまとった姿はこんな感じ。
昔のマタギは、山に入るときには遭難してもいいように準備をしていたそうです。
だから昼飯に持参したおにぎりも、一度に満腹になるような食べ方はしなかった。ちびちびと食べて、帰ってきたときに幾分か余っているように。
マタギに関する本を読みすすめていると、精神や手法、道具に至るまで、随分と昔とは変わったんだなぁ…ということを感じずにはいられないのですが、現在でも引き継がれている部分があるのはなんだか嬉しい。
大鳥地域の人にも、炭焼きや山菜採りを盛んにやっていた時代があり、山にあるものだけで小屋を建てる技術を持っていた。また、吹雪の冬山で、凍え死なずに夜をやり過ごすための方法なども持っていた。
本当の山の中で、暮らすこともあったんですね。
だからこそ、人間ではどうにもあらがえない自然の力を恐れる反面、恵みに感謝していたのだと思います。
マタギの生き様、精神が今も人の心を掴んで離さないのは、今の世の中がコントロールできない自然と共存するのではなく、人間社会の中に自然を組み入れ、コントロールしようとしていることが不自然だと感じているから…かもしれません。
マタギ文化も薄れつつある昨今ではありますが、山に生きる人たちは、太古と変わらぬ自然との共存の姿勢を示し、世の中に対し背中で語れる人たちであり続けて欲しいですね。
せば、またの。
マタギや山のことを深く知る、おすすめの良書。