ひろろーぐ

小さな山村で暮らしながら、地域社会、民俗、狩猟、採集について考察・再定義するブログ

“舞うマタギ”、秋田県阿仁の根子番楽をみてきた。

ども、田口(@tagu_h1114_18)です。

秋田県は北秋田市、阿仁根子集落というところに行ってきました。

ここは東北で狩猟をやっている人ならおのずと知られる、マタギ発祥の地。

 

マタギは熊やカモシカ(現在は禁猟獣)を中心とした大型獣を中心とした猟を冬季~早春の生業としながら、採集・農耕・炭焼き・木こり(杣夫)・鉱山などの副業を兼ね備えて暮らしていた集団で、マタギの中では里では使ってはいけない言葉(山言葉)や、特殊な儀礼・儀式が存在する。

僕の暮らす大鳥にいるマタギ(地元では”熊撃ち”と言われている。)も、元々はこの秋田県阿仁出身の”松橋富松さん”という方から伝わった(※恐らく1800年代)と言われ、地域のおじいちゃんに話を聞くと、かつては熊を解体する際に行われる儀礼や、水垢離(冷や水に入って身を清める)といった儀礼があったという。

 

根子集落でも熊狩りも含めた狩猟・採集文化が残り、それに付随した儀礼・儀式などの風習が現在も行われていると思われる。(聞き取りしたわけではないのであくまで推測で。)

 

根子集落の俯瞰写真。真ん中に家々の塊(集落)、周辺に田んぼ、その奥に山というわかりやすい図式で地域が構成されている。

 

それに加え、ここでは根子番楽(国指定重要無形民俗文化財)という伝統芸能が続いている。

番学について、僕は詳しく知らないので、当日根子番楽会場にて配布された資料を引用させて頂くと…。

「番楽」とは、山伏(やまぶし)神楽の一種で、かつて修験道の山伏たちによって行われていた神楽です。山伏たちが権現の獅子頭をまわして村々を巡り歩き息災延命、悪魔祓いの祈祷を行っていたときに、その宿泊先の民家等で古風な舞を演じたものとされており、これを山伏神楽と言います。東北地方(青森、秋田、岩手、山形の各県)に分布しており、日本海側で「番楽」、太平洋側では「山伏神楽」「権現舞」などと呼んでいます。

※山伏とはザックリ説明をすると、山中で修業する僧のこと。僕の暮らす鶴岡市の羽黒にも山伏がいます。

 

番楽が根子集落で伝承された番楽は、源氏の遺臣、あるいは平家の落人たちが根子に移り住んで行われるようになったそうで、歌詞の内容が文学的に優れていることが特徴に上げられると根子番楽保存会の会長さんがおっしゃっていました。

その他、根子集落やマタギのこと、番楽については「森と水の郷あきたさん」の記事でかなり詳しく述べているのでこちらを参照ください。

参考URL:“元気ムラの旅シリーズ 日本の里百選゛根子集落探訪゛”|森と水の郷あきた

 

左が根子番楽のプログラム、右がチラシ。

根子集落の入り口に番楽パネルがあったので顔をはめた。変顔はお手の物。

 

実は根子に訪れるのは今回が2回目。

2016年の初夏に、ご縁があって根子集落の何名かとお酒を呑ませてもらった機会がキッカケで番楽のことを知り、興味を持った。それに、根子の若い人たちが現実を見据えた目をしてて、とても好きになった。大鳥のおじいちゃんたちの目を見ているようだった。

そうして一年越しにようやく番楽を観に来ることができた。

 

※タイトルで”舞うマタギ”と書いていますが、根子番楽で舞う人=全員マタギではないと思います。事実、小学生や中学生も舞っていたし。マタギ集落の舞いなので、こんな見出しをつけてみたかったのです。

 

根子番楽

演目は口上という番楽の代表の挨拶も含めて全部で10種。曽我兄弟、鞍馬の演目は特に迫力あった。19時半から始まって、終わったのは9時半も近くなっていた。

ずーっと見続けていたし、イラストを描いてみたり、番楽を通じて気になったことはメモに残した。

恥ずかしいけど、メモの一部。

 

劇場で行われるダンサーや歌舞伎みたく、繊細な動きまでを表現して観客を魅了するようなモノではないけれど、昔から地域でひたすらに続けられてきて、現在の小・中学生にも引き継がれていることがすごいと思った。

根子番楽保存会の会長さん曰く、”毎週水曜日に練習を行っている”らしく、恐らく集まれるメンバーで行っているのだろうけど、それにしても毎週というのはすごい。

舞いの技術向上は勿論だろうけど、毎週行う意味って、もっとムラっぽいものだと思う。言葉にならないけど、地域の中に年寄も若者も子供も混じって集まって舞ったり、囃子をしたり。根子集落で地域の人と何かをしたという事実を積み重ねる中で、心の中に根付いてくる何かがあるような気がします。それは思春期の青少年でも同じことなのかと。

 

お酒の席で、ノリで番楽の舞いを踊りだし、それに合わせて周りも踊り出す。

まさに1年前、僕が初めて根子集落を訪れた時に、頼んでいた訳でもないのにその場で番楽を見せてくれた。僕らは舞いを見れて嬉しかったけど、それ以上に舞った根子の人たちが楽しそうだった。息を吸って吐くような番楽だと感じた。

 

同じことを繰り返し、ずっと続けていく。

発展がないように見えて、一方では土に戻る手続きなのかなとも思える。

 

日付は毎年固定で、8月14日の19時半~。秋田県北秋田市阿仁根子の旧小学校体育館で行われるそうです。

機会をみつけてまた観に行きたい。

 

せば、またの。

-民俗・文化

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