ひろろーぐ

小さな山村で暮らしながら、地域社会、民俗、狩猟、採集について考察・再定義するブログ

落ち着きを常態化させる雪国とかんじき

ども、田口(@tagu_h1114_18です。

「ウサギかカモでもいないかしら…」と思って、久しぶりに鉄砲を担いで雪上をブラブラ。ここ数日は曇り・雨が続いて昨晩も雪は降らなかったので獣を見つけるには条件が悪いが、雪は硬くなり、歩きやすかった。それに、晴れていたので気持ちがよかった。

 

雪の上を歩くには”かんじき”が必要。クロモジと言われる樹木を曲げて作られる楕円形の履き物で、現代風に言えばスノーシューのようなもの。長靴に紐でくくりつけて履く。雪国では縄文時代からこのかんじきを使われていたようで、江戸時代後期に東北を旅した菅江真澄が残した『菅江真澄遊覧記』という文書にも、かんじきの記載がある。現在においてもほぼ原形をとどめていて、原始的かつ理にかなった履き物だ、ということ。

ただ、かんじきを履いたからといって雪の上を快適に歩けるものではなくて、70㎏もある僕の体重を表面の雪だけでは支えきれず、ズブズブとスネくらいの深さまで沈んでいく。履かないよりは遥かにマシですが、そのまま歩けば30分足らずバテてしまう。それに比べて地元の人はかんじき歩きがとても上手。沈まないし、早い。そして何より、何時間でも歩き続けられる。雪国育ちに敵うはずもないのでしょうが、何が違うのかずっと不思議だった。見たところ地元の山男は大よそ背が低く、蟹股歩きで、山を歩く時は常に膝を軽く曲げて歩く。でも、それだけではない気がしていたし、この日の雪歩きでは2つ発見したことがあった。

 

一つは、くるぶしまでしか沈まないかんじきの歩き方。具体的には次のようなこと。雪上で片足に体重を乗せるとズブズブ沈んでしまうので、そうならないよう両足にバランスよく体重を分散しながら一歩踏み出す。この時、残った足に少し体重を残しておきながら踏み出した足で軽く雪を蹴るようにサクッと踏み、足裏の土踏まず辺りから徐々に前へ体重移動させながら次の足を出す。この繰り返しで歩くと時間はかかるが、くるぶし辺りまでしか沈まなくて歩くのがかなり楽だった。この歩き方で大事なことは、落ち着いて歩くこと。焦って次々と足を運ぼうとすると片足重心になったりして足が沈むし、そうなると疲れてしまう。歩き続けることも難しくなる。

もう一つは、雪で歩くスピードが制限されることがかえって心の落ち着きをもたらすんじゃないか、ということ。言い換えると、雪国の人は落ち着いて行動するようにと自然側から強いられているんじゃないか、ということ。僕の住む大鳥地域の人たちも、普段から落ち着いて淡々と作業をする人が多い。何事も一気に終わらせるというよりは、いつか終わらせられるように無理せず休みを入れながらやり続けられる状態を保つことのほうが重要だという気質がある。雪国や奥深い山で暮らすと、そういう気質に育っていくんじゃないかと、身を持って感じた一日でした。

 

さて、肝心の獲物は足跡しか確認できずに空戻り。だったのですが、地元の猟師から「イノシシを見た」との連絡が。大鳥では初出のイノシシ。増えては困るのですが、牡丹鍋も食べたいと思いつつ、遭遇したら対処しなければ…。

 

せば、またの。

-考察