ひろろーぐ

小さな山村で暮らしながら、地域社会、民俗、狩猟、採集について考察・再定義するブログ

狩猟デビューで本当に死にかけた。~マタギの世界はめちゃくちゃ厳しい!命懸けの熊狩りに参加してきました!~

2017/09/11

この記事では、熊の解体後の写真や、捌くシーンなど生々しい写真を掲載しておりますので、抵抗がある方は記事を読まないことを強く勧めます。

 

生まれて初めて狩猟に出ました。

しかも熊狩り。

 

僕の住む大鳥地域には、昔から伝統的に熊狩りが行われてきています。

マタギで有名な秋田県阿仁の阿仁マタギからその方法や精神が伝わったとして、大鳥でもマタギと呼ばれる人達がいる。

今回は山を知り尽くしたマタギたち(猟師さん)の熊狩りに初めて同行させて頂いたのでその様子をご紹介していきます。
今回の熊狩りは僕も含め10人で山に入っていきました。

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装備を整えていざ出陣。

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春のポカポカ陽気を体で感じさせながらも、山にはまだまだ残雪が残る。

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「傾斜45度はあるんじゃないか?!」という山の斜面に対し、杖を突きながらできるだけ安全な最短距離を歩いていきます。

写真では伝わりにくいかもしれませんが、この雪の斜面が本当に危ない。

雪で滑り落ちたら谷底真っ逆さま、大怪我or死亡コース。

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猟場の峰に到着したら、全員で熊探し。

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正面に見える雄大な山々を、双眼鏡を覗きながらひたすら探します。

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この頃はまだ余裕があった僕。

 

ベテランの猟師さんたちが、熊らしき存在を確認するなり山の名前、沢の名前、一本松、三本松、松山、三角点などなど…具体的な場所の情報を無線機を使い仲間に伝達します。

 

素人の僕にとってはただの山々。

何を言っているのか、どの場所を言っているのかサッパリわかりませんでした。

 

場所を変えながらかれこれ1時間近く探していた頃…

 

「熊がいた!」

 

無線機で熊の居場所の情報が飛び交い、どのような陣形で猟をするのかを決め、いざ熊狩りに出陣。

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今回の熊狩りでは、前方(まえかた)と呼ばれる情報発信係と実猟をする部隊に分かれておこないました。僕は実猟部隊についていくことに。

前方(まえかた):見晴らしの良い場所から熊の様子を双眼鏡で常に観察し、随時情報を流し続ける人。熊狩りにおいて最も大切な役割。

 

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熊がいる峰に向かって歩いていると、熊がついさっきまで歩いていたと思われる足跡に遭遇。

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右が熊、左が人の足跡。

 

険しい山の斜面を歩きながら、もう一つ峰を超えれば熊がいる場所まで到着。

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いよいよ熊と対面の時。ライフル銃に弾丸を詰めます。

クマによって違うそうなのですが、敏感な熊は人の気配を感じるのも早いらしいので、この辺からはずっとヒソヒソ話。

 

「家政婦は見た!」ばりに峰の頂上からそっと覗き込み、気づかれないことを確認しながら丁度いい山の斜面で発砲の準備。

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発砲する場所から約500m離れたところに熊を確認。

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「バーーーーン!!!!!」

 

右耳が「キーン」となるくらいの爆発音。

射撃教習で散弾銃を撃ったことはありましたが、その何倍もの大きな音に只々驚くばかり…

 

僕がいたチームでは予め山の上部、山の中腹、下の方の3組に猟師さんが分かれていて、それぞれが熊をめがけて発砲。

しかし、弾は当たらずに熊は峰を超えて逃げていった。

 

「そっちいったぞー!」

 

前方(まえかた)からの指示が無線機から流れ、峰を超えた方で待っていた猟師さんが続いて発砲。

 

しかしそれでも当たらず、もう一つ峰を超え、川の上流の方に逃げて行ったところを別の猟師さんがライフルで仕留めた。

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100kgくらいの熊だったそうです。

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僕が現場に到着したころには既に解体されていました。

 

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腸は腸、肉は肉、脂は脂…といったように、大まかに部位に分けてナイフで捌きます。

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各自持ってきた袋に肉を詰め、分担してリュックに入れてお持ち帰り。

血の臭いや生々しい毛皮を目の前にして、少し目を覆いたくなったけど、この光景が本来は普通なんだろうなぁ~。

 

僕は熊の皮を背負って山を降りていました。

足にズッシリとくる重量感。20kgはあったかと思う…。

 

30分に一回くらいのペースで休憩を入れながらみんなで下山。

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歩きっぱなしでヘトヘトになっている僕に対し、疲れた表情を一切見せない猟師さんたち。

 

山を下山し始めて2時間が経ち、日もすっかり落ちてきた夕方6時頃…。

借してもらったヘッドライトで前を行く人たちの足跡を照らしながらゆっくりと歩いていく。

息が上がり、肩に痛みを覚え、足が段々に上がらなくなってくる。

 

「もう少し。」「あと少し。」

自分で自分を励ましながら、一寸先が見えない暗闇の中、道が割と平坦になってきていたことだけが唯一安心できた。

 

そんな矢先、再び避けられない雪の斜面にたどり着き、一歩一歩足場を確かめながら歩いていた時。

 

「ズルズルズルーーーー!!!」

雪の上で滑落し、斜面から落ちていった。

 

「たぐちーーーーーー!!!!!」

ベテラン猟師さんの叫ぶ声が聞こえた。

一瞬、何が起こったかわからなかったけれど、条件反射的に持っていた杖でブレーキをかけて何とか止まった。

 

しかし、熊の皮を背負っているせいか自分では全く身動きが取れない。

我に返って足元を見てみると、斜面の端が残り2mのところにまできていた。

 

このまま滑り落ちていたら雪解け水で流れが速くなった川に飲み込まれ、熊の皮の重みにも耐えかねて溺れ死んでいたと思う…。きっと、誰も助けにはこれないだろうし。

 

ベテラン猟師の二人に手を差し伸べられ、何とか助けてもらったが、足の震えが止まらない。

気づいたら声も出なくなっていた。

 

自分の意識がある中で、本当に死にそうになる経験をしたことはこれが初めて。

人はいつか必ず死ぬ。それは大鳥の人達を見てきた中で思っていたことですが、所詮は頭で考えていたことだとわかった。

 

生きててよかった。

そう本気で思える自分がいたのは、自分自身が死と隣り合わせになったから。

いつか死ぬことはわかっているんだけど、死ぬのはやっぱり怖い。

 

そんな当たり前のことを体で覚えつつ、生かされたことに本当に感謝。

助けてくれた猟師さんがたに本当に感謝です。

 

その後、何度も足を滑らせ、雪に足を取られながら何とか山の入口までたどり着いた。

車の明かりと、猟師の皆さんの顔を見てホッとしたのか、目の奥から涙がこみ上げてきた。

 

山の恵を受ける代償として、命を掛けなければいけない。

「マタギは命懸けなんだや。」帰った後に言われた一言が、僕の胸にずっしりと刻み込まれた。

振り返ってみれば一日中山を歩きっぱなしだし、「傾斜70度はあるんじゃないか?」と思うような斜面や崖を登ったり下りたりもする。

今回は運良く熊が獲れたが、獲れないことだって普通にある。

 

命を落とす危険を十分にわかっていながらも、なぜそこまでしてマタギが山に向かっていくのか…。

 

一昔前であれば熊の皮も肉も胆嚢もかなり高価に取引されていたそう。

熊は捨てるところがないと言われるほど人にとって貴重で有難い存在であった。

命と天秤にかけられるかどうかはわかりませんが、熊狩りに行く動機は十分あったように思える。

 

でも現在では、熊肉は貴重なことに変わりありませんが原発事故の放射能の関係で販売することはNGだし、熊の皮も高値では売れない(熊の敷物などに需要が殆ど無い)。胆嚢も昔ほど高価では無いという。

 

生産的でもなければ合理的でもない。

 

経済的に大きな支えになることの無く、大きなリスクを背負って熊狩りに行く理由がどこにあるのか…。

マタギの精神に繋がる部分がきっとあるんだろうな。

そんなことを考えながら、マタギが山に向かう理由を、僕自身がこれからもっともっと山に入っていく中で見つけられればいいなと思う。

 

集落に帰ってきたら、早々に解体の続きを始める猟師さんたち。

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熊の血を手に浴びながら捌いています。

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これが噂の熊の胆(胆嚢)

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人数で均等割されたお肉や骨たち。

放心状態に近かった僕は、解体の手伝いもろくにできずに佇むばかりでした…。

 

始めての狩猟は盛りだくさんすぎる内容だった。

 

動いていた熊を僕自身の目で確認しながら、次に見たときは死んでいた。

今まで生きてきた中で一番と言っていいほどの量の血をみた。

山を糧にして生きることの厳しさを知った。

 

他にも沢山学びがあったけど、今回ハッキリとわかったことは、「自然」と言葉にすると、あたかも人にとって良いことをもたらしてくれるようなイメージがありますが、人にとってすごく厳しい面を持っているということ。

「自然と共に生きる」とか、「持続可能な生活のために自然の中で暮らす」なんて言えばかっこいいけど、実態は全然甘くない。

山では山の脅威があるし、海は海で脅威がある。

だから、昔からその脅威を恐れ、恵みを祈ってきた歴史が今も山の神や悪魔払いといった行事に通じているのだと思う。

 

いくら技術を進歩させてきた人間でさえも、自然をコントロールしきることはきっとできないし、その脅威からは逃れられない。

だからこそ、自然と徹底的に向き合って生きている山の人達は本当にかっこいい。

普段、同じ集落で一緒に暮らす中では見れない姿を今回山の中で見ることができた。すごく輝いて見えた。

 

今回は、大鳥の猟師さんたちがまだまだ自分の手の届かない存在であることを改めて感じさせられたと同時に、一歩づつマタギの背中に近づけていきたいと改めて思う、長い長い一日でした…。

 

あと、僕が大鳥に来た頃、熊狩りがあることを知り、東京の知り合いに話をしていたら「春の熊狩りを見てみたい!」と言われ、面白いツアーが出来そうだなぁ~なんて思っていたのですが、今なら言えます。

 

素人は絶対に無理。下手したら死にます。

その代わり、興味がある方に対しては僕が頑張ってお伝えしていきたいと思います。

 

ちなみに、マタギや熊猟の世界を知るならば、熊谷達也さんの邂逅の森がおススメです。小説なので読みやすいのですが、マタギの方々に実際にお話を聞いて作られた本で、マタギ発祥の地、秋田県阿仁マタギのことや、大鳥のことも出てきます。

そして個人的にとてもおススメなのが、東北芸工大の教授をされている田口洋美さんが描いた、今は無き新潟県奥三面のマタギについて丁寧に取材して書かれた著書。

マタギの世界についてもっと深く知りたいということであれば、少し値段も張りますがこちらもおススメ。僕がマタギ文化を勉強し始めた頃に購入した本です。

ちなみに僕が書いた大鳥の輪郭という民俗誌にも、大鳥の熊狩り文化について触れているので、ご興味あればこちらもぜひ。

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