ひろろーぐ

小さな山村で暮らしながら、地域社会、民俗、狩猟、採集について考察・再定義するブログ

フットワークの軽さと懐の深さでヨソモノの意見も人も受け入れる地域づくり。住むのは難しくとも、いざという時に助け合える関係人口を目指して。

2019年3月21日に、山形県鶴岡市にある慶應先端研究所レクチャーホールにて、「地域未来フォーラム~地域多様性でいこう~」が開催されました。地域づくりの現場では世代や地域を越えて折り合うようなプロセスが必ずといっていいほど必要ですが、その経験知の共有を目的として、現在進行形で活動している合同会社とびしま、朝日地区東部自治振興会、鶴岡市大鳥地域の3地域からトークセッション形式で聞かせていただいた。

ここではセッション②で、「よそモノのアイデアでナリワイ作り」と題し、鶴岡市朝日東部地区自治振興会の渡部政治さん、渡部恵美さんに大網地域での小さな拠点の取組や、現在に至る迄の地域での出来事などのお話を伺いました。

※この文章は、本イベントの企画者でもあるSukedachi Creative 庄内が執筆をしています。

登壇者プロフィール

鶴岡市朝日東部地区自治振興会

渡部政治さん <事務局長>(写真左)

1950年生まれ。アパレル関係に22年間、スーパーマーケットに17年間勤務。1996年より非常勤の公民館長となり、2015年4月より、現職の鶴岡市朝日東部自治振興会事務局長となる。

 

渡部恵美さん <ローカルデザイナー>(写真右)

1968年生まれ。鶴岡工業高校情報技術科卒業とともに上京。プログラマー・SEとして会社勤務。主に表参道、銀座、新宿が顧客先場所。その後地元に戻り、プログラマーとして会社勤務。なんだかんだあり、1995年に嫁入りして大網住民となる。2016年、「小さな拠点」づくり検討委員として部会「特産品販売促進」副部長となり、「小さな産直」に携わる。2018年より、現職の鶴岡市朝日東部自治振興会ローカルデザイナーに就任した。

ファシリテーター 西直人さん

2006年リードクライム株式会社を起業。主たる業務は、まちづくり・観光・環境教育に関するコンサルティング、計画作成、ワークショップデザイン、ファシリテーション、技術者・指導者の養成など。杏林大学観光交流文化学科「イベント・コンベンション論」「ファシリテーション論」講師。2016年、鶴岡に移住し、仕事場を庄内と東京のダブルローカルにして3年目。

大網地域概況

  • 山形県朝日村(現 鶴岡市)の東側、月山の麓に位置する豪雪地帯。
  • 大網地区は5集落で構成、人口300人弱。
  • 月山筍など、山菜や茸などの山の幸が有名。
  • 朝日東部地区自治振興会の中で、国土交通省の”小さな拠点”事業に平成27年度から取り組む。
  • 小さな拠点では、特産品開発や買い物支援、生活交通支援などを行い、その中でヨソの若者と交流をするイベントを行ってきた。
  • 平成31年度に旧大網小学校跡地に大網交流センターを新設。事務局とローカルデザイナーを設置し、”小さな拠点”とするべく活動中。

 

西さん

このセクションでは”よそ者のアイデアで生業づくり”というテーマですが、最初にご自身たちの自己紹介の中で小さな拠点づくりという取り組みを発表して頂きます。これはヨソモノではなくまさに地域の方々が自分たちの地域の課題を解決していこう、という取り組みですので、その小さな拠点づくりの紹介と、さらにその中で上手によそ者を取り入れた事業・交流が特徴的ですので、そこにも触れて頂こうかなと思っております。よろしくお願いします。

 

恵美さん

ダブル渡部でいかさせて頂きたいと思います。局長、マイク持って。

 

(会場笑)

 

大網地域で小さな拠点が生まれるまで

政治さん

座ってやりましょうか。だって5分立つのはお年寄りには辛いので、座ってよろしいですか。うちの集落ではまだ雪も1~2m近くあります。そういうところから来ました。

私は昭和25年1月1日生まれ。めでたく生まれています。渡部政治と言いますが、今69歳です。思い起こせばアパレル関係に23年、それから公民館長やって19年、それから今の職業が4年目と、家では物好きのジジイと言われております。何事も長くやってればいいと思うわけではないですが、俺に勝る人はいないと自負してなかなか止められないというのが本音でございます。公民館時代には全国表彰も受けました。でも、うちの女房に言わせるとお金を貰ってこいと。笑 「何も足しにならない」と言われながら、額だけは3枚ありますけど。そういう感じでやっていまして。

本題に戻りますと、平成27年に大網にある小学校が統合され、閉校になりました。「ムラに子供がいなくなるとダメになる」と、いろんな講演で聞いていましたので、じゃあ何しようかと市役所とお話しした時に、小さな拠点という取組みがあると聞きました。それで、その活動を始めようと平成27年に地域の人への周知活動から始めました。

平成28年からは、大網5集落から4~5名に代表で集まってもらって検討委員会というのを作りました。何度か先進地視察もやりまして、1年掛けて地域デザインという形で骨子をまとめました。この中で、3年後にやること、5年後にやること、10年後にやること、ということを書いています。それに基づいてやろう、と。その中で、鶴岡出身の東北芸工大の2人が冊子の地域のマップを作ってくれた。とても有難かったと思っております。

平成29~30年の2年間では、廃校を改造した小さな拠点を作ろうと思って検討したのですが、解体&新設費用の方が安くなるということで、新築になりました。今年の4月1日から我々もそこに移って、”交流センター”という名前で活動をします。平成30年4月には市からローカルデザイナーを新設しよう、ということで、隣の渡部恵美が入りました。これからの色んな事業の説明については彼女の方が詳しいと思いますので、私からは以上です。

 

小さな拠点の取組みにヨソモノの意見も人も受け入れる。

恵美さん

今年度からローカルデザイナーとなりました。元は嫁で大網に来たのですが、今は「どこから婿とったんだ?」って聞かれるくらい地元に密着している状態です。

それで、小さな拠点検討委員会というのが立ち上がった時には三部会があって、その特産品販売部会で活動していました。研修会で「ヨソでは軽トラ市っていうのをやってるらしいよ」って聞いた時に、「それだったらすぐできそうじゃん!」って思って。それから注連寺って大網の由緒あるお寺さんで昔、餅や酒を振る舞っていたのが、人もいなくなってやらなくなったから、そこ協力しつつ少し大網のモノを売らせてもらおうか、なんていう感じでやり始めました。

その後、注連寺の人から「5月8日にもお祭りがあるんですよ。その時も人が来るからやってみれば?」って言われて、今度は外で開催しました。そういう形で、特産品開発部会は進んでいきました。

 

ヨソの方々が大網の取組みに参加してくれているのは何がキッカケかというと、マイプロ部の人たちと関わるようになったことです。マイプロ部というのは、山形とか庄内にUIJターンを考えている、今首都圏に暮らしているような方々が今のうちから東京であっためておこうよ、って部活的に集まっていて、定期的に鶴岡とかの地域も来てコラボレーションもしているという活動です。

それで、ばばごっつぉ座談会の方々とタイアップしてナリワイづくり研修会をやったり。そこではフィールドワーク、と言うか大網地区をちょっと歩いてもらって「何か面白いものがありますか?」っていう風なことを聞いて、その後に「うちの地域ではこういうのやってみたいんだ」って地域の人たちがヨソの人たちと話をするわけですね。その中で、「なんかいいですよね、それ。」っていう風に言われると、地域の人たちも「なんか賛同してもらえた。よかった。」って背中を押された感じで、「今度は本当にやってみようか」ってなっていって…。

でも、「ちょっと待って。本当にできるんだか俺がた?」ってまだ不安が残っていて。なので今度は、野外活動の研修を受けました。さぁ、これで研修受けたから本当にやらねばねぇな!ってなって。そこから、「皆さんすみませんが、意見なんかも頂戴して実際自分達だけで動く前に皆さん協力お願いします」っていう形で、5月に月山筍収穫体験のデモツアーをやって。大網には月山筍を作っている畑があるんですね。

マイプロ部の方々を含めて初対面な人たちばっかりで、「こんなことして何が面白いのや。」って言われるかなぁ、ってドキドキしながら体験後に皆さんからご意見を頂いて…。実際、地元にいると気づかないことってやっぱり多いんですね。で、そこを気づかせてもらえたって言うのものすごく勉強になりました。

あと、大網では夏と冬に運動会やりますが、冬の運動会が珍しいですよね。そこにマイプロ部から「ひとチーム作って参加したいんです。」って話があったので、「いいよー。ひとチーム作るんだったらやってみれば?」ということでやってみる。外部の人たちはひとチームを作って本当に来てくださいました。

こんな感じで、外の人も、外の意見も取り入れて行動に移していける、というのがこの地域の特徴なのかなと思っています。どうまとめればいいのかわかんないんですが…。

あんまり”ヨソモノ”って、言葉的に好きじゃないんですよ。” ヨソモノチーム”っていうような形で運動会もやったんですけど、その、” ヨソモノチーム”っていうのも可哀想かなと思ってたんですが…。他に何て言ったらいいか分からない状態ですが、とにかく楽しんでもらえたと思います。反省会も会費1,000円頂きまして、とっても楽しんでいてくれたと思います。集落をハシゴした人もいたようで。紹介は、まずこんなところで。

 

現在の大網地域の年配者と若者の関係性は?

西さん

では、まずはいくつか質問させていただきたいと思います。今日のテーマである”前向きな地域づくり”で、年配者と若者、地域内・地域外という中もマイプロ部の方との関わりがあると思いますが、そもそも地域内の年配の方と若者の関係性とか、その地域づくりの現場についてはどういう状況で、どのような認識でしょうか?

 

政治さん

大網地区は人口が299人になりました。65歳以上が131名いて、44%近くが年寄りです。地区で一番大きい組織は老人クラブで、今年度の会員は52名。私はそこの事務局長をやっているもんだから、自分勝手に文章を書くと、10人程度はきますね。例えば巨大なかまくらを作るにしても38名の年寄りが集まるんです。で、奥さん達は餅をまけば来るという。俺が冗談で脅すわけですね。笑 それで年寄りとは結構仲良くやってます。

30代40代も結構いますが、なかなかこの自治振興会の関わりには来ません。体育部には若い人も入っていますから運動会には来ますけど、普段の会議に出席するという立場にない、というのが実情ですね。その辺を我々がどう取り入れていくか。

今一番の悩みは、若い夫婦は子供ができると街中へ行ってしまいます。特にお嫁さんが「鶴岡に住む。」って言うと聞きません。その他には、コミセンにくるお父さんたち…70も過ぎた年寄りですよ。「おらほの集落は婿から摂関されて、意見が通らねぇ。何とかしてくれ」って。みたいに話をしにくる人もいます。

それと、地域では何かあったら酒飲み。小さな拠点の部会の反省会をやると結構集まるんですが、なかなか若者が集まらないと言うか。例えば、地域の中で若い人が意見をすると「ならお前がやってくれ!」ってなってしまうんですよ。「だから俺は喋りたくねぇ!」って。そうするとだんだん無口になって喋らない、っていうのが今までの流れで。これからはそうも言ってられないというか。

 

西さん

そんな現場でローカルデザイナーの恵美さんは地域をどんな風に思っているのでしょうか?また、ご自身も外から来て徐々に上の方に上がっていきますけども、当初は若者でしたよね?

 

恵美さん

そうですね。嫁に来た当初は27歳でした。ですが、何せここで公表させて頂きますが再婚ですので、もう何も怖くないんですね。一度失敗すると、「まぁなんでもいいや」っていう感じで。それで地域に入っていた。その頃は同世代もすごく元気あったと思ったんですよ。人口でみても当時は155世帯774人だった。ですが、24年経ったら本当に周りがいなくなっていて。同世代の嫁さんの繋がりはまだまだあるのですが、下の世代ってなると、数えるほど少ない。それこそ運動会の反省会、私は呼ばれてないのに他の集落にも酒飲みに行きますが、その時にその地域の若者と話をしています。そこで、「今後もここにいるんだか?」って。36歳の男が二人いるんですけど、「俺らそろそろ頑張らねばね。今年は(嫁さん)なんとかする!」っていう約束をしてきました。こんな形で仲良くやっています

 

西さん

地域づくりも明るい直接の営業活動なんですね。運動会は大分参加率が上がってきたそうですね。

 

政治さん

運動会だけは地元も、大網から外へ出た人もいっぱい来ます。”晩酌拾い”という競技があって、350mlと500mlの缶ビールを拾うだけなんですけど、冬の場合はいいんですよ。雪に突っ込むとみんな350mlに見えるから。笑 それでも7ケース出さないと全員が拾えないんですよ。「どこにそんな大人がいたのかな?」って思うぐらい、足悪かろうが腰悪かろうが全ての人が出てきて、缶ビールを拾って帰るという。

それで、私が一番苦労しているのは人を集めなんですよね。私は46歳まではアパレルをやっていましたが、当時は地域の事にほとんど協力していませんでした。運動会には何回か行きました。だけど会議には一切出なかった。いざ自分が公民館長になったら、「誰も来ないので、これでいいのかな?」と思ってヨソの講演を聞いたら「一人でもいいよ。あなたが仕掛けたことで一人来てもらえれば、その人賛同してるじゃん」って言われたから、「じゃあいいじゃん。」という感じで、ここまできました。とはいえ、若い人に「いろんな会議に出た方がいいよ」って言うんです。自分が上に立った時に、協力してもらえるから、って。どこまで聞いるかわかりませんけど。

 

(会場笑)

 

ヨソモノに気付かされたこと。

西さん

こういった状況で小さな拠点づくりを始められて、特産品販売促進部会とマイプロ部で新しい風が入ったりして盛り上がっているそうですが、先ほど恵美さんが話していた、ヨソの人が来ることで地域にどういう”風”が起きるのか、というところを教えてもらえますか?

 

恵美さん

そうですね。地元にいては本当に気づかない宝。宝物。資源が多分宝物なんですけれども、そこってなんか、あって当たり前。もう放棄されると荒れちゃってどうしようもなくて、それもしょうがない、当たり前というような状態を「なんかもったいないよね。」とか言ってくれると、「もったいないのか。」って気付かせてもらえる。ほんと、ヨソからの視線・視点が、今まで諦めてたものを、「諦めずに頑張ってみようかな」って思わせてもらえることがあると思ってます。

 

西さん

その交流の場に地元の人とヨソの人がいるのでしょうが、そもそも地域のおじいちゃん、おばあちゃんとかをこの場に引っ張り出すのは、どうしてるんですか?

 

恵美さん

じっちゃん、ばっちゃんは事務局長におまかせしてます。事務局長はしっかりと地盤を持ってますから。そこに私が後から、「すいません、お願いします、お願いします。」というような形で一人一人回っているような状態です。

 

住むのは難しくても、いざと言う時に助け合える。そんな関係性を続けていけたら…

西さん

では、そのヨソの方と交流して楽しいですよ、の次の段階は何を目指しているんですか?元々の特産品販売促進部会という商品開発をしていくのか、ここで交流をできた人たちに移住してもらいたい、なのか。

 

政治さん

移住って言うのですが、うちの地域は雪が多いため、空家になるとすぐ壊してしまいます。そうしないと、街中に住んでもまた大網に雪下ろしに来なきゃならないので。一冬に6回も降ろす家もあったりするんですよ。万が一、家が崩れると近所に迷惑かかるので、出て行く人のほとんどは家を解体するというのが実情。なので、空き家がないんですよ。

ところが、今年の場合は出ていった人が多くて、空き家が6件あります。だけども、その人曰く、買った街中の家が小さくて物が収まらないから当分は大網の家に置こう、ということで人に貸したくないと。大きな綺麗な家ですけど、なかなか進まないと。「移住者が雪を降ろすからいいでしょう」とかって話をすれば、「じゃあ貸そうか。」ってことにもなるんでしょうが。それは今後交渉していく余地があるのかなと。

 

恵美さん

関係人口に関わってくると思うんですが、地元から外に出ている人も運動会ではいっぱい戻ってくるんですね。その時に盛り上げてくれてる、という状態なので。本当は住んでもらえれば良いのですが、難しい現状だと思います。何かあった時に助けてもらえるような関係を続けていけるよう、繋いでいけたらいいなと思います。

 

地域の人たちに色んな取組みに参加してもらうためにやっていること

西さん

では私からの質問はこれくらいにして、企画者のすけだちさん、会場から事前に拾った質問などはありますでしょうか?

 

企画者

自治振興会コミセンということで、チームでやることの難しさを感じる時があるそうで、上手く回すヒントがあれば教えて貰いたいです。

 

政治さん

うまく回すと言うか、小さな拠点の会長と私は同級生なんですよね。だから事前に、「今度こういうの言われると思うから適当にやれよな」と、お互いに。まず私の特徴は声がデカいということで、声で制圧するっていう感じになるのか知らないけども。笑

まず、上の役員の人はちゃんとある程度コミュニケーションとって進む方向を決めておけば、いろんな意見があっても「これはこういうふうに考えてるから、こういう風に考えて欲しい」と説得はできるので。地域には協力してくれる人っているんですよ。

 

恵美さん

うまく回すということで、説得って事務局長の方が言うんですけども。その…説得じゃなくて納得させているのが、もう一人事務がいるんですけども、そちらの方がすごく上手なんですね。「政治さんはこういうことを言いたかったんですね」、っていう補足を女性陣がカバーするという部分もあります。

 

公民館時代に立ち上がった組織の数々も、そろそろ見直し時期にきている。

参加者

組織図を見ると人口に対して、結構な組織の数があるし、自治会も色んな役職がぶら下がってますよね。中には消防団とかって地域の暮らしの中に直結する必要な組織もありますが、今後を考えて、大網にある組織をこういう風に変えていかないといけない、といった事を考えていたりしますか?

 

政治さん

一番考えられるのは消防団ですね。各自治会に消防団がありますが、現実は活動しないと同じなんです。みんな鶴岡の街中に勤めていますので、大網が火事になっても誰も来れないんですよ。そう考えると大網で一つの消防団ってした方がいいのかなぁと。今、消防団以外は放水ポンプも触っちゃいけないんですよ。火事になっても消火栓使えないんですよ。ポンプ自動車もあるんですけど使っちゃいけない。ただ、一人だけは使っていいんですけども、最低4人ぐらいいないと消火活動はできないので…。そういう実情があるんです。

また、農業の中山間事業とか色んな地域の事業の事務を全部自治振興会でやって、村の人たちの負担を軽減すればいいのかな、って思うけど、みな取っちゃうと「何もしなくていいから俺、街中へ降りる」って変な風に取られると困るな、と思って。実際、全ての事務を一つの組織でやっている地域もありますので、ドンドン人口が減っていく時には何か考えていかないと。

昔は大網でも火災予防活動の一環で、消防団が各家の中に入っていたんですよ。「ガス台汚いぞー。掃除しておけよ。」って。それが月1回来るだけでお母さん達は台所を綺麗にして待ってると。そういう習慣が今はなくなったんですよ。朝、玄関来て、「消防来ました。気をつけてください。」で帰るんですよ。それでは予防査察にならないんじゃないか?!今まで通りのやり方では難しいところがいっぱい出てきている感じはします。

 

恵美さん

この小さな拠点づくりをきっかけに組織をちょっと見直そうっていう話がちょうど出ています。この組織体制が出来た公民館時代から23年も経っていて、形が変わっていないのはおかしいと思います。そろそろ見直しの時期だと考えていますが、どのような形がいいのかはまだまだ検討課題ですね。

 

若者は地域を知らないからこそ、教えて貰うスタンスで動くと吉

参加者

私のおじいちゃんが大網出身なので、すごくお世話になっている感じがあるんですけど…。若い人に期待していることを聞きたいと思って。一旦、集まりに顔を出してもらえると有難いっ言われて行くんですけども、特に話すことはない…みたいな。笑

勿論コミュニケーション中心に酒呑みはあるんですけど、仲良くなった先に「若い人にこんなことやってもらいたいんだ!」みたいな、そういう願いとかがあったら教えてもらいたいです

 

政治さん

若い人、おっしゃる通り。うちの方でも若い人が会議に来て、「こんなとこ呼ばないでくれ」ってこういう感じで言われますね。「いやいや、あなた方の意見を聞きたいから呼んだんだよ」ってことなのですが、「あの場では俺、喋られねぇ」っていう人が多いんですよ。実際に地域に関わってないから地域がわからないというのもあるんでね。若い人は集落の役員名簿には名前は載っていますよ。その役員も年1~2回集まる程度ですから、地域のことも覚えないし。コミュニケーション取ろうとしても一方通行っていうかね。その辺は我々が若い頃とはだいぶ違うなって。年寄りに喰ってかかってくるような人はいない。酒飲んでもいないんですよ。酒飲むとよく分かります。我々が若いころは最後までいて後片付けしたもんですが、今の若い人は30分もしないうちに「お先に失礼します。」って帰るんですよね。「お先じゃねえだろ!」って。笑 「この場を誰が片付けんだ」って。「年寄りが片付けんのか?」って言いたくなるほど若い人はさっさと帰りますね。子供がいるからしょうがないなと思うんですけども、そんな感じなんです。

 

西さん

怒られた…、みたいな。笑 逆に政治さん世代に何か要望があるとしたら。

 

参加者

今の話を聞いて、割とズカズカいっていいんだな、っていうのはあるんですけども、やっぱりお酒飲むと怖いじゃないですか。勢いがなんかこう、スゴイじゃないですか。だから怖くないよという話が伝わればいいんだろうな、と思う。僕らもむしろ一緒に倒れるぐらいまでドンドン飲んだらいいんだろうなと。

あとは無礼講のラインがわからないみたいな。変にちょっと気を使っちゃうラインと言うか。上の世代の関係性も正直わからないですよ。地雷踏んで、「あー…。」みたいな瞬間とか結構あって。「あの何々さん?」って言うと「俺、あいつ嫌いだから…。」みたいな。地域に入らないとわからないのは仕方ないけど、入らなくてもわかるようなタイミングがあるといいのかなと。

 

恵美さん

それこそ酒飲みの場になると小さい頃からそういうのって見てませんでした?ああいう環境をものすごく小さい時から見てるのが大切だと思いますよ。そうすると力関係なんとなく見えてくるかなと。

 

参加者

力の流れを感じながら攻めるところは攻めると。

 

恵美さん

攻めやすい所から攻めると 。

 

西さん

同世代間の折り合いという意味で、今回のテーマに近いですよね。恵美さんはコミュニケーションの最初は何かお願いする事だ、って言っていましたね。

 

恵美さん

まぁ私も嫁に来た時は27できたので。すいません何歳ですか?

 

参加者

25歳です。

 

恵美さん

私もそのくらいで来ていて、本当に知らない人だらけじゃないですか。私の場合は嫁という立場なので、分からないことがあるとどうしても聞いたり、お願いしないといけない状況になる。そこを私はいつも、「すいません。」と言いながら教えてもらう、っていう。自分から聞きに行くとか、そういう形をとっていましたので、それで地域の人からも私の顔を覚えてもらって。

 

参加者

もしやりたいことがあったら順繰りを待つんじゃなくて、むしろ「これをやりたい。」ということを勝手にやっちゃった方が仲良くなれる可能性ってあるんですかね?割と順番待ちしちゃうんです。

 

政治さん

地域の人はそれを待っているんですよ。自分が美徳みたいに言っているけど、そう言ってくれる人がいないんですよ、今。だから例えば、無礼講って言うけど、無礼講にも色んな種類がありますからね。何言ってもいいってもんじゃないけど。俺は何言っても良くなったけど、皆さんの場合は何でも言うと「あいつ生意気だな!」ってなるので、その辺は自分でさじ加減を考えて言わないと。酒呑みだっていろんな種類の人がいるんだから。酒の前でいい人もいるし、酒飲んでも俺みたいに同じ人もいるし。いくら酔っても潰れない人もいるし。その辺は見極めて、絶対自分の意見を言った方がいいです。ちなみに大網のどこなんですか?

 

(会場笑)

 

参加者

それは個人情報で。笑 ありがとうございました。

 

内と外を繋ぐコーディネーターは案外、自分の地域にいるかもしれない。

西さん

逆に会場のお父さん、お母さんがたでアドバイスありますか?僕も移住者ですけど、ドンドン来いっていう人もいれば、見えない地雷もあるんですよね。その辺のアドバイスあれば。

 

参加者

移住者ではないんですけども、私は朝日地域に勤務して半分移住者みたいな年代になりました。感じることっていっぱいあって。朝日の方ってすごく消極的だなって。登壇されているお二人は違うタイプですけども、意見はあるんですけど出せないことが多いなー、っていうことがあって。

まさにその大網地区の取り組みの中でも、若い世代で言いたいことがある人っていると思うんですよ。大御所がいるところでは言えない、でも若い人たちだけで集まった時に言ったことをコーディネーターさんが伝えて、理解してもらったことを若い人に返してあげる、っていうやりとりがあれば、物事がうまく進むんじゃないかなと感じたところがあったので、是非やってみて頂きたいです。

 

西さん

はい、ありがとうございます。コーディネーターって色んな場面で求められることが増えてきているのですが、第二の恵美さんみたいな人はどうやって探せばいい?どうやって育てる?どうやって連れてくる?

 

恵美さん

難しいですよね。私もこんなポジションになるとは思いませんでしたから。ただ、私が何でこのポジションになったのかなって思うとやっぱり、どの地区にもポンポン動き回る行動力があったからなのかなと。政治さんが最後まで呑まないで帰る若者がいるって言っていましたけども、私の集落では最後まで残っているのは若者です。私より若い人たちと一緒に最後まで酒呑みして、同世代のお母さんたちが「恵美ちゃん、あと任せたぞ、帰るからなー」っていう感じで。私は20代30代40代と一緒に飲んで腕相撲したりとか。男性とですよ。そんな感じで遊んでいますけど、楽しい場を作って、事務局長に昨日の反省会はこうで、誰が残ってたよ、っていうような話をしたり。こんな人がどこの地域にもいるんじゃないかなって思うんですけど。そこに気づかないだけとか?

 

年配層の集客方法は、サロンや会議で訳の分からない情報を流すこと

参加者

僕は25歳ですが、僕らの世代って人を集めはSNSを使うことが多くて。このイベントもFacebookで見つけてきたんですが、50~60代の方々って人を集めってどうしているのかな?というのが気になって、質問させて頂きました。

 

政治さん

SNSは恵美さんの担当です。私はそういうのは一切触れません。何が流れているのか知りません。しかし、「こういうのやるから」っていうのが流れていると問合せがくるので「流れてるんだなー」っていう感じです。やっぱり得意分野があるんでね。私の得意の喋るのと、恵美さんはインターネットをいじって皆さんの誘いを待つっていうね。そういう感じでお互いに協力すればいいかなと。面白いぐらい来ますよ。問題はタイトル、見出しだと思うんですよ。見出しが面白くないと誰も来ませんよ。見出しをいかにつけるかっていうのがそれはあなたの特性だと思いますので、ぜひ25歳の若さでバッと集められるような方法にすれば、お、これちょっと興味あるなって。一回行ってみようかなって。一回くればしめたもので、次回もっと楽しくできますから。

 

西さん

政治さんは普段、なにで情報を得てるんですか?

 

政治さん

私はお茶飲みサロンとか言っても20分ぐらいしゃべるんですよ。今の情勢とか、全てね。新聞ではスポーツ欄と庄内版を見ますね。それとあと、お悔みですね。朝日村の人死んだから人口減ったなぁ、とか。そんなもんですよ。そうすると話題があるので、年寄りおばあちゃんが「すごいの、すごいの」って言いますね。例えば、こういうものを見せるんですよほら。「大網ではイノシシ16頭を捕まえましたよー」とか。で、「撃ったのはこのお兄さんですよー」って。訳のわかんない情報を流すんですよ。みんな喜んで聞きますよ。

 

西さん

その訳の分からない情報はどうやって流すんですか?って彼は聞いているのですが。笑

 

政治さん

俺は色んな会議とかに行くから全部こういうの(猪を捕獲した写真)持って行くんですよ。で、「これわかりますか?1月12日イノシシ捕まえたんですよ。」ってこんな話をして場が和めばいいかなと。おもしろい男だなってなるんですね。顔は全然駄目だけど、話はいいなって、こういうツカミですね。

 

参加者

Face to faceの関係と言うか、ネットだけじゃなくて、今まで築いてきた関係だったりとか信頼だとかっていうのが大きいので、それで人を集めてるっていう認識でいいですかね。

 

政治さん

そう言ってもらえるとありがたいです。

 

断らない、という魅力的な地域

西さん

このセクションのテーマは“ヨソモノのアイデア“だったのですが、小さな拠点づくりや運動会に関わった方から、よそ者の視点で大網の魅力とかをちょっと語っていただいてもいいですかね。

 

参加者

今日はお金の話が出ていませんけど、お金とかも上手に使ってらっしゃると思うんですよ。手伝ってくれたらタダじゃなくて、おばあちゃんにちゃんとお金払ったり。その辺は事務局長しっかりこっちに請求してきますので。そういう緩急の使い分けとか。

それと、大網の魅力は、何を言っても「はい。」って受けてくれることですね。ツアーでどこの地区にいこうかなと思った時にどうしても大網が最初に思い浮かんじゃうんですよね。行ったら行ったで面白い事を今の調子でやってくれるので、みんなファンになって掴まれていく、っていう感じですね。なので、他の地域でもよそ者を受け入れたいという時は、ツアーみたいな感じから最初入っていくんだと思うんですけど、面白がって受け入れてくだされば、そんな悪いことはしないと思うので、という感じですかね政治さん。

 

政治さん

おっしゃる通りです。

 

西さん

ここの地域づくりは人材が良い!って言うとあまりにも身も蓋もなくなってしまうので避けてきたんですけども、やっぱりフットワーク軽い人材がいてコーディネートも上手にしているというところで上手くよそ者の方が入ってきたりとか、入れるプログラムを作られている地域だったので2番目のセクションで登場して頂いたところでした。

時間になりましたのでここに休憩に入ります。ありがとうございました。

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