「農家はネットでモノを売れ!」とは言うけれど…。
ども、田口(@tagu_h1114_18)です。
このブログを続けて4年になりました。
おかげさまで現在では月間で約3.5万人、5万PVほどのアクセスが集まるブログメディアになりました。3年目以降は読者数が横ばいとなっておりますが、検索したら僕の記事がヒットすることもあり、コメントを貰ったり、お仕事をご依頼いただいたり、イベントの告知をすれば参加してくれる人がいたりと、本当に有難い限りです。改めてブログ運営を続けてきて良かったなと思います。
このブログも、基本的には僕が山奥に暮らしていて思ったこと、感じたこと、経験したこと、ノウハウなどをアウトプットする場であるのですが、同時にイベントの集客や物販などにも広げられたらいいなとは前々からずっと思って、やれるときは実行してきました。
だけど、田舎に来て、農作業を手伝ったり、自分で山に行って山菜採りなどをしてきて思うのは、いち個人経営の農家が、オウンドメディアを立ち上げて、アクセスを集めて販路を拡大していくとか、ネット通販をバンバン仕掛けることは、かなり険しい道のりなんじゃないかと思う。
※オウンドメディア:Webサイトやブログ、SNSを使って、自社の情報を発信していくメディアのこと。
繁忙期の農家は劇的に忙しい。
僕も春になれば山菜採りに行くのですが、山菜の中でも、根曲り竹(僕が暮らす庄内地方では月山筍と言います)は売値が高くて採集しに行く人が多い。だけどのその仕事をプロでやっている人のスケジュールがマジで鬼なんです。
【月山筍採りの一日】
深夜12時 起床
深夜1時 出発
深夜2時 登山口到着
早朝4時 採集現場に到着・採集開始
昼12時 山を下りる
午後3時 仕分けと出荷作業
午後6時 就寝
夜中には家を出て、まだ真っ暗なうちからヘッドライトをつけて山登りを始める。夜明けには採集場所に着き、一息つく間もなく採集を始める。山の中を歩きっぱなしの、藪漕ぎしっぱなし。プロはリュックやテンゴに背負いきれなくなるほど(30~40kg)の根曲り竹を採集します。山を降りたら鮮度が落ちないうちに出荷か瓶詰をします。今年は山形県内でもよくニュースになりましたが、熊に襲われるリスクもあるし、竹が目に刺さることも、滑落することも落石の危険も。とにかく危険がいっぱい過ぎるところに生えているので、行くほうも命がけ。こういう環境で、タケノコ採りをほぼ休みなく毎日、一か月ほど続けるそうです。山が好きじゃないと続けられない仕事です。
もう一つ農作業を上げてみます。僕のおばあちゃんの家がさくらんぼ農家をやっていて、ここ数年は毎年、収穫の手伝いにいってます。手伝いと言っても一泊二日とか、二泊三日程度ですが、さくらんぼの収穫繁忙期も、かなり忙しい。
【さくらんぼ農家の収穫期の一日】
3時半 起床
4時 さくらんぼの収穫開始
8時 朝ごはん
9時 収穫作業
12時 昼ごはん 休憩
15時 収穫作業
19時 ご飯
22時 就寝
朝の涼しいうちから作業が始まります。タケノコと違って特別体力は使わないけれど、ひたすら収穫し続けるという仕事は楽ではない。脚立を頻繁に登り降りするし、2~3週間は毎日収穫。Every Day収穫。仕分けや箱詰め、配送作業は、近所の人にアルバイトでお願いします。
「農民はネットでモノを売れ!」とは言うけれど…。
「田舎の人はネットもできない情報弱者だから、未だに農協に卸している」とか、「産直にばかり降ろしている。ネット販売をやればもっと儲かるのに…。」と思う人は沢山いるだろう。僕もそう思っていました。だけど、農作業の繁忙期や山菜採りを経験してみて思うのは、言うは易し、やるは難し、です。
農業を兼業で行う人も多く、農繁期以外はサラリーマンだとか、身近な人には山菜採りも、田んぼも、キノコ栽培も、木の実採りも、狩猟も、除雪も…。一年中働き続けている人がいます。その人の田植え時期は朝4時起きて山菜採りに出かけ、7時に家に帰って飯を食べる。8時から田植えをし、12時に家に帰って昼ごはん&資料に目を通す。13時~18時までは引き続き田植え。19時に晩酌をしながらご飯を食べて、22時に就寝。という殺人的なスケジュールだと言っていました。それに田舎には地域行事や消防団もある。子供がいる親であれば、子供の部活動の送り迎えや、学校・PTA行事、スポ少などもある。
休む暇なんて一秒もない。なんていったら嘘になりますが、平日も週末も関係なく働いている人が多くいる中で、農作物を作り、ウェブのプロモーションもして、個別に受注・発送作業もするというのはかなり大変。休憩の合間にSNSに投稿するのが精一杯だと思う。ブログのオウンドメディアなんてよっぽど文章を書くことが習慣化していないと続けられないです。
とはいえ、そんな忙しい!忙しい!とばかり言ってもダメやし、農家さんもそれぞれで売り先を開拓したり、農閑期に販売サイトを作ったり、金を払って広告を打つなど、やれる範囲で営業・販売を行っていると思います。
ここで伝えたかったのは、「農民はネット通販で直販して利益をとりなさい。」というのは、誰にでもできる技ではないということ。代理販売の方が今はまだ、主流だと思う。パソコンを使えない年寄りの農家さんは特に…。
終わりに…
2年前に参加した地方で仕事を作る塾で同期だった人が開発に関わっていて、最近リリースしたスマホアプリのポケットマルシェと言うのがあります。農家と消費者をつなぎ、農作物の売買も気軽にできて、コミュニケーションも出来るアプリらしいのですが、忙しい農家の人がどのくらい消費者とのコミュニケーションに時間を掛けられるのか。はたまたそのコミュニケーションが農作業の励みになるのか。農業を支える仕組みになるのか。出品・受注・発送の事務などを助けるのか。農家の流通経路を変える一つの手段になるのか…。スマホアプリだからこそ農家も気軽に始められる仕様になっているのか。
東北食べる通信を仕掛けた高橋博之さんが旗を振っていることもあり、どんな展開になるのか個人的に注目しています。
ポケットマルシェ|四季折々の食材を、生産者から。
サービス開始は2016年夏からのようです。
気になる農家の方はぜひ登録してみてくださいませー!僕も登録してみようかと思います。
せば、またの。